舌小帯短縮症を考える

舌小帯短縮症は病気では無い!(進化or退化)
『舌が短くても大学は卒業できたし、支店長にも成れた!』

これは私の歯科医院の50代の患者さんで、重度の舌小帯短縮症の方のセリフです。(手術を勧めたところ怖いし、痛いから。別に何も困っていないとのこと。)

実は、舌小帯短縮症は日本では殆ど知られていない病気で、最初赤ちゃんの哺乳障害(ほにゅうしょうがい)で助産師に相談した時に初めて知る病気なのです。

舌小帯短縮症でもお母さんの母乳の出が良ければこれはスルーしますし、哺乳障害で手術させるのは可愛そうと親が思えばそのまま育てます。(哺乳障害で入院というのは稀です。)

次に指摘されるのは、保育園や幼稚園で構音障害(こうおんしょうがい:か⇒た、さ⇒しゃ、し⇒ひ、た⇒だ、ら⇒だなど)を指摘され、友達とのコミュニケーションが取れないために“ことばの教室”または、“特別支援学校”で発音練習します。

“ことばの教室”に通ってもあまり改善しないのは、構音障害は舌が上顎の口蓋(こうがい)に触れて発音するためで、舌が上に挙がらない舌小帯短縮症だと届きません。

ですが、口を殆ど開かないで発音すれば、クリアできます。

2018年から口腔機能発達不全症という病名を厚生労働省が保険導入したために、歯科検診に“舌小帯短縮症”が加わったのですが、それ以前の1歳半検診、3歳児検診、保育園、幼稚園、小学校、中学校、高校の歯科検診には舌小帯短縮症のチェックは無かったのです。

検診では、60%以上の日本人が舌小帯短縮症の軽度から重度だったのですが、全部Noチェックだったので、今では舌小帯短縮症は病気では無く、これがスタンダードになりつつあります。

だから殆どの日本人は、舌小帯短縮症であってもあかんべえができない程度で普通に生活できてしまうということです。

放っておいても重大な障害が出る病気では無いからです。

逆に、舌小帯短縮症のメリットが最近多くなっています。

それは“歌ウマ”と“ハイトーンボイス”です。

これは舌小帯短縮症ですといつも下顎前歯の裏側を舌で押しています。

それと口呼吸が多いので、口蓋が深くなり、口腔が木管楽器のようになっています。

それで舌を下顎前歯の裏側を押すと声帯が良く開くそうで、口腔が反響して声が高音が出る“ハイトーンボイス”になり、“歌ウマ”が多くなっています。

しかし、デメリットもあり普段の会話が口を開いて話すと舌が上顎の口蓋に付かないために“構音障害”で何を言っているのか聞き取れません。

これを克服するには、口を開かなければ舌が口蓋に付くので一般の方は区別付きません。

この場合は“滑舌(かつぜつ)が悪い”で評価されます。

これができないといじめや不登校になる可能性があります。

構音障害は「か⇒た、さ⇒しゃ、し⇒ひ、た⇒だ、ら⇒だなど」に発音することで、滑舌はアナウンサーことばでニュース原稿を詰まらず、トチらないで読むことで別物です。

更に、現在では“ことばを話す”より“SNSの文章”が取って代わっていて、YouTubeでも自動音声が肉声に代わって話す時代になっています。

冒頭の50代の患者さんのように日常生活も舌小帯短縮症だからって困らない時代になっているし、日本人の6割以上が実は舌小帯短縮症なのです。

これは進化しているのか退化しているか?

 

舌小帯短縮症